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丹久窯

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大西邦彦(おおにしくにひこ)

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大西邦彦(おおにしくにひこ)

八代目
生まれ年:1956年
作陶開始年:1993年

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Works

撮影:青谷 建

Interview

花を主役に、うつわは良き伴走者として。15年の会社員生活を経て、丹久窯・大西邦彦が探求する素朴な焼き締めに宿る機能美

土と火の力、その表情をそのままに。使うほどに深みを増す焼き締めの美学 

丹久窯のうつわは極めてシンプルで、一つひとつ異なる丹波の土の風合いを見せる。これらは、釉薬を一切使わずに土を高温で焼き上げる焼き締めの作品で、大西邦彦さんが手がける。

「うちは焼き締め中心の窯元です。薪窯で焼くことで、炎の当たり方や灰の降りかかり具合によって、一つひとつ違う表情が生まれます。これを『窯変(ようへん)』と呼びますが、自然が作り出す色ムラや質感が、焼き締めの魅力ですね」

手に取ると、土そのもののざらりとした肌合いで、温かみを感じる。

「焼き締めのうつわは、使えば使うほど角が取れてなめらかになり、深みある色合いに育っていきます。特に花を生けると、主役の花がぐっと引き立ちます。花瓶が主張しないんですよ。脇役に徹することで、野の花一輪でも美しく映えます。それがいいですね」

現代の住環境に合わせ、かつて主流だった大きな花瓶や置き物から、現在は皿やマグカップなど普段づかいの食器へと主軸を移している。しかし、根底にある「土味を生かす」という伝統技法は、何代にもわたって受け継がれてきた丹久窯の揺るぎない核である。

36歳、震災の記憶と共に歩み始めた第二の人生 

代々続く窯元の家に生まれた邦彦さんだが、はじめからやきものを志していたわけではない。15年間、サラリーマンとしてまったく別の世界に身を置いていた。

「当時は家業を継ぐことを強制されることはありませんでしたし、陶芸をやろうという気持ちもあまりなかったんです。会社では営業や経理などの業務をひと通り経験しました」

転機が訪れたのは30代半ば。組織のなかで責任ある立場を任されるようになる一方で、「自分の商売をして働きたい」という欲が大きくなっていったという。そのとき、やきものをイチから作り、販売まで担う家業を思い出した。

「36歳で実家に戻り、学校にも修業にも行かず、父の仕事を見よう見まねで手伝いはじめました。その翌年に阪神・淡路大震災が起きて。お客さんの多くが被災されました。あの出来事は、自分の生き方を見つめ直す大きなきっかけになりましたね」

サラリーマン時代の規則正しい生活習慣をそのまま持ち込み、毎朝8時には仕事場に立つ。15年の社会人経験を経てから土に触れた邦彦さんにとって、それは単なる家業の継承ではなく、自らの手で作り、自ら売るという一人の商売人としての挑戦の始まりだった。

焼き締めは計算通りにはいかない。だから面白い

かつては組織の一員として、役割を全うすることに重きを置いていた邦彦さん。しかし、陶芸の世界はすべてが自己責任だ。

「自分で作ったものを直接お客さんに売る。失敗すればすべて自分に返ってきますが、喜んでいただけた時の手応えもまた、自分だけのものです。ただ、土や火といった自然に委ねる仕事ですから、100%コントロールすることはできません」

「会社にいると、自分で作ったものを自分で売ることは不可能です。でも、やきものの仕事はそれができる。失敗すればすべて自分に返ってきますが、売れた時の喜びもまた、自分だけのものです。丹波焼の窯元は、問屋を通してお客さんの顔が見えない商売ではありません。直接足を運んでくださる方々とやり取りできることも、面白いですね」 

オーダーを受ける際は、イラストを描いて完成イメージを共有するなど、元会社員らしい丁寧なコミュニケーションを欠かさない。それでも、窯のなかの炎の具合で、仕上がりは予期せぬ方向へ変化する。

特に頭を悩ませたのは、焼締め特有の「偶発性」への理解だった。機械的に作るわけではないため、どうしても完全にコントロールできない部分がある。顧客がうつわに思い描くイメージと、自然素材が作り出した現実の仕上がり。そのギャップをどう埋めるか、今でも試行錯誤の連続だという。

仕事の合間、ふと顔を上げれば、丹波立杭の豊かな自然が広がる。

「丹波立杭の山は、自生の雑木が多いんです。秋になると紅葉が本当に美しい。ゆっくりと散策して、ここだけの風景を味わってほしいですね」

若い世代からは、地味で渋く、古めかしいと言われる焼き締めのうつわ。初めて使ってみようという人に向けてコツを聞いてみるとこう応えてくれた。

「まずは小さなものから手に取ってみてください。食卓に置く、あるいは野の花を一輪挿すだけで、空気の流れが静かに変わりますから」

穏やかな語り口のなかに、邦彦さんのひたむきな焼き締めへのこだわりが垣間見えた。 

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丹久窯

Address

〒669-2141 兵庫県丹波篠山市今田町下立杭115

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