sueharu-gama / ja


目次

末晴窯

profile

西端春奈(にしはたはるな) 

profile

西端春奈(にしはたはるな) 

三代目
作陶開始年:2002年

学歴・修行歴
京都精華大学デザイン学科 卒業 

The state of the workshop

スクロールできます

prev
next

Works

撮影:青谷 建

Interview

日常をふわりと緩める魔法。末晴窯・西端春奈が、しなやかな感性で描き出す『和みのうつわ』

幸せな食卓を「妄想」して描く、いきものたちの瑞々しい息吹 

ギャラリーの開け放した窓をのぞき込むと、絵が描かれたうつわを静かに彫っている女性の姿が見える。末晴窯の西端春奈さん(以下、春奈さん)だ。金魚のプレートを製作途中で、焼かれる前の状態だが愛らしい金魚がうつわのなかで優雅に泳いでいる。丁寧に彫り、いのちを吹き込む。 

他にも、ネコや干支といった動物、ツバメなどの鳥、ミモザやツバキなどの植物など、身近な自然をモチーフにした華やかな絵付けのうつわは、春奈さんの作品だとひと目でわかる。 

白地や淡い釉薬のうえに、釘彫(くぎぼり)の凹凸ある柔らかな筆致。その佇まいは、丹波の土が持つ素朴な質感と、手仕事ならではの温かみが溶け合い、見る人の心を静かに解きほぐす。 

「一人暮らしの女性の朝の食卓とか、春の柔らかな日差しとか。頭のなかでイメージした映像のなかに自分の作ったうつわがある風景を妄想するんです」  

光の角度、食卓を囲む人の会話、そこに流れる空気感ーー。具体的なシチュエーションをイメージしながら筆を動かす。 

「機能性だけじゃなく、手に取った時にほっとするような、ふわりとした和みを感じてほしくて。かわいいものを見た時の『きゅん』となる感覚に近いですかね」  

自分のうつわが、息つく間もないほどに忙しない日々の余白になってほしい。ユーモラスな表情には、そんな願いが込められている。 

遊びと仕事の境界線。「家で全部できる」と気づいたあの日 

春奈さんは、祖父の代から続く窯元の次女として生まれ育った。やきものはいつもそばにあり、工房は幼い頃の遊び場だった。 

「広告の裏に落書きしたり、折り紙を折ったりするのと同じように土を触っていました」  

遊ぶ隣でろくろを回す父・正さんの姿は、春奈さんにとってはごく日常で、特別「かっこいい」と憧れたことはなかった。 

しかし、京都の美術大学でデザインを学び、就職活動に直面した時のこと。絵を描き、ものを作る。春奈さんはその両方を叶える仕事を探していた。ふと生まれ育った原風景を振り返って、身近だった「やきもの」に気づく。 

「陶芸なら絵も描けるし、ものも作れる。実家の仕事で全部叶えられるやん!って(笑)」  

大学卒業後は家業に入り、父に師事。父から基本的な段取りを教わり「釘彫やたたら作り(板状にした粘土を曲げたり組み合わせたりして成形する方法)」の技法を用いて自身のスタイルを形作っていったという。 

父と娘、根っこでつながる自然への視線

父・正さんは、形や釉薬のダイナミズムを追求し、春奈さんは自然を愛らしくデフォルメして落とし込む。一見すると対照的な2人だが、春奈さんは「根っこは同じ」だと感じている。 

「岩や草木、動物。自然のなかにあるものに対して何かしらを感じ取る、その感性は父と共通している気がします」  

春奈さんの豊かな感性を養っているのは、仕事が終わった後のひとときだ。ジャンル問わず気になった本を読み、漫画や映画にひたる時間だという。 

「江戸時代の情景を描いた時代小説から、ホラー、漫画まで。その時の気分で物語の世界に没入するのが、好きなんです」  

特定のジャンルに縛られず、多様な物語を楽しむフラットな姿勢が、彼女のうつわに宿るおおらかさを生み出しているのかもしれない。 

ニコニコと穏やかに語る春奈さんの力まない自然体な生き方が、うつわを通じて使い手にも伝わっていく。 

疲れた心に寄り添ううつわ 

丹波焼の約850年という長い歴史。その重みを背負いすぎるのではなく、あえて軽やかに、自由に楽しむ。それが春奈さんのスタイルだ 。 

「生活していると、ままならないことも多い。そのなかで、私の作ったうつわがちょっとだけ気持ちを前向きにするスイッチになれたら」  

窯元を訪れる人のなかには立杭を「おばあちゃんの家のような、懐かしい故郷」だと表現されることがあるという。ノスタルジックな雰囲気と柔らかな人柄が伝わる春奈さんの作品もまた空間にすうっと馴染んでいる。 

今日も春奈さんは自然に親しみ、うつわのヒントにする。まだ見ぬ誰かの食卓に小さな幸せを届けたいと願い、作品を生み出している。 

Overview
of

末晴窯

Address

〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭2-9

Website

目次