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省三窯
profile
市野秀作(いちのしゅうさく)

profile
市野秀作(いちのしゅうさく)
三代目
生まれ年:1986年
作陶開始年:2010年
学歴・修行歴
三田学園高等学校
龍谷大学
京都府立陶工高等技術専門学校
主な受賞歴
茶の湯造形展 優秀賞
神戸ビエンナーレ現代陶芸コンペティション 大賞
現在形の陶芸 萩大賞展 佳作
日本伝統工芸近畿展 近畿賞
日本伝統工芸展 入選 等

The state of the workshop
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Works


撮影:青谷 建
Interview
丹波伝統の灰釉に、優美な光をのせて。省三窯・市野秀作が描き出す「釉彩」の新しいリズム
伝統の「灰釉」を土台に。瑞々しい感性が織りなす「釉彩(ゆうさい)」の奥行き
省三窯のギャラリーで作品をながめていると、まるで水彩画のような、しっとりと瑞々しい色彩に目を奪われる。それは、丹波焼が古くから守り続けてきた伝統的な「灰釉(はいゆう)」をベースにしながらも、これまでの産地のイメージを鮮やかに塗りかえるような、軽やかで多彩なグラデーションだ。
3代目の市野秀作さん(以下、秀作さん)は、独自の技法「釉彩(ゆうさい)」を駆使し、うつわというキャンバスに色彩を刻み込む。
「丹波の材料を使いながらも、古いものの再現で終わりたくはないんです。この土地にある素材で、どこまで新しい表現を追い求められるか、挑戦しています」

秀作さんのうつわは、エメラルドグリーンや柔らかなピンクといった色相をまとい、まるで新緑の季節を閉じ込めたかのような透明感を放つ。SNSで発信するとその繊細で優美な色合いに、飲食店オーナーからも多くの関心が寄せられているという。
しかし、その革新的な色使いを支えているのは、土作りから成形、そして薪窯での焼成という、泥臭いまでの伝統技術の積み重ねだ。一見、丹波焼であることを忘れさせるようなモダンな佇まいの奥には、吸いこまれていくような釉薬の奥行きと、職人としての徹底した研鑽が静かに息づいている。

京都で養った審美眼、早く作りたいと焦った青年時代
秀作さんは3代目として、幼い頃からやきものがある環境で育った。土をこね、ろくろで作る風景を見て育ち、粘土で動物の置物を作って遊んだ。川に行ったり、山でクワガタを捕まえたり、スーパーファミコンでマリオやドンキーコングをしたり。ごく普通の子ども時代を過ごしたという。
高校生になると進路を考えるようになる。同級生にも窯元育ちが4〜5人おり、全員自然に「家業を継ぐ」。同じく「いずれは自分も」という意識が、自然と芽生えた。
卒業後はあえてやきものの学校を選ばず、龍谷大学の社会学部に進学した。やきものだけを見るのではなく、彫刻やガラス、工芸品を見て感性を養うように努めた。京都の古いお寺や神社、文化財にもなるべく足を運ぶ。
さらに、全国のやきものの産地をめぐった。大分の小鹿田焼、愛知の瀬戸焼、滋賀県の信楽焼、三重県の伊賀焼。そのなかでも、登り窯や穴窯で焼かれた焼き締めの作品に強く惹かれた。自然の土そのものの素材を生かした作品。それは幼い頃から自然に目にふれてきた丹波焼のルーツと重なった。
「さまざまなやきものを見ていくうちに、焼き締めが自分の作りたいものかもしれないと気づきました。どんな表情になるのか焼き上がりまでわからない。自然が作る美しさに魅力を感じたのかもしれません」
そのときに「作りたい」という気持ちが強くなったと秀作さんは振り返る。訓練校(京都府立陶工高等技術専門校のこと)で1年間陶芸を学んだ後、家業に戻り作ることに没頭した。
日中は家業の仕事に打ち込み、夜に自分の作品制作や釉薬の研究に取り組んだ。オリジナルの釉薬も作りたい。この釉薬とこの釉薬を混ぜたら、どういう色になるのか。終わりのない実験を繰り返すなかで、現在の「釉彩」の原型が形作られていった。

窯の煙を絶やしたくない。うつわ好きとともに磨く「用の美」
日々、秀作さんの背中を押すのは、丹波焼の里や展示会などでうつわを手に取ってファンになってくれた人たちや料理人の存在だ。
「新しく店を出すから、うつわをすべて任せたい。そう言ってもらえた時は、震えるほどうれしかったです。美術品として飾るのではなく、毎日使われ、料理を美しく引き立てる。その日常の風景に自分のうつわがあることが、僕の自信になりました」
秀作さんのうつわに、色鮮やかな料理が盛られ、世界中へと発信される。「プロの料理が合わさるとこんな豊かな表情になるのか」という発見が、次の創作のエネルギーになっている。

秀作さんが立杭を訪れる人に見てほしいのは、5月の新緑の季節だという。
「山が驚くほど近くに感じられて、緑のグラデーションが稜線をくっきり描き出します。あの色の重なりは、丹波に来ないと見られない。僕のうつわにある色の深みも、あの風景から教わったものかもしれません」
伝統の土壌に足を踏ん張りながら、新たな感性を吹き込んで、令和らしい丹波の色を焼き上げる。秀作さんが回すろくろの先には、使い手の日常をあかるく彩る、未来の丹波焼が見えている。
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省三窯
Address
〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭2-2
TEL
FAX
Website
陶芸教室
少人数でゆっくりと作陶していただけます。丁寧に指導致します。
体験可能日:年中無休(不定休あり)
受付時間:10時~17時
予約:必要
当日受付:不可
<粘土細工>90分/1名様 2,750円
・受入人数(最大):6名
・仕上り日数:約1ヶ月
※釉薬は、白、黒、飴の3色からお選びいただきます


