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かねと窯
profile
清水圭一(しみずけいいち)

profile
清水圭一(しみずけいいち)
創業 大正末期 四代目
生まれ年:1962年
作陶開始年:昭和59年
学歴・修行歴
京都市工業試験場 研修専修課修了
主な受賞歴
兵庫県芸術奨励賞(平成14年)
兵庫県文化功労者表彰(令和6年) 他

The state of the workshop
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Works


撮影:青谷 建
Interview
丹波の土の声を聴いて、土と作る。伝統と革新のあわいで、かねと窯・清水圭一がたどり着いた作陶哲学
「作為」を捨てて土に委ねる。料理を主役にする控えめな佇まい
かねと窯のギャラリーを訪れると、土の荒々しい質感をクールにまとったシャープな花器がまず目に飛び込んでくる。その周囲には、一転して黒やグレーといった柔和な気配をまとったうつわたちが、静かなオーラを放ちながら並んでいる。
鉢や皿、飯碗は、高台・口縁・深さのバランスが穏やかで「用の美」を備え、食卓をしっとりと落ち着かせてくれる。
「以前は『こういうものを作りたい』という強い意志が先にあり、それを実現するための技術を後から考えていました。今は違います。目の前にある土でなにを作るべきか、この土がなにを求めているのかを考えるようになりました」

かねと窯の清水圭一さん(以下、圭一さん)は、自身の制作姿勢を「土との対話」と表現する。ろくろを回し、あるいはフリーハンドで土を積み上げながら、都度土の声に耳を澄ませる。
「大げさにかっこよく言えば、土と一緒に作品を作っている、という感覚です。作為を捨てて土に任せる。そうすると、うつわは主張しすぎず、料理を受け止めるだけの控えめさを備えていきます」
そうして生まれたうつわが、レストランなどで料理を鮮やかに引き立てている姿を見たとき、圭一さんの心には静かな喜びが広がる。
「硬派な印象のうつわに、優しい料理が盛られる。その瞬間にうつわの表情がふっと変わるのが、たまらなく嬉しいですね」

休みなく仕事をする父と祖父の背中が、やきものの原風景
圭一さんのなかにある原風景は、かつての自宅に隣接していた、今はもう取り壊されてなくなった以前の工房だ。むき出しになった土壁にあちこちこびりついた泥、あらゆるものが雑然と置かれた空間。そこで父と祖父が並んでろくろを回していた。
「仕事場の夢を見ると、必ずあの場所が出てくるんですね。父が登場するときも決まってあの古い工房。無意識下で原点になってるんでしょうね」
父も祖父も、常に何かを作って窯に向き合っていた 。その背中を見て育ったこともあり、圭一さんもまた手を動かしていないと落ち着かないという。「ぼーっとする時間が作れなくて。本当はもう少し物思いにふけってみたいんですけどね」と苦笑いする。
「祖父からはよく『大きくなるな、大きくなるな』と言われました(笑)。背が高くなると、登り窯の中に入りにくくなって仕事がしづらくなるからと。ああそうか、僕はやきものの道に進むんだなと、自然に意識が向きましたね」
高校卒業後は京都の職業訓練校に進学した。それまで土に触れることはほとんどなかったため、「素人同然」からのスタートだったが、基礎を身につけて家業に戻った。当時は注文に応じて同じサイズの雑器を揃える、メーカーのような職人仕事が主流の時代だった。

遠回りして気づいた、ルーツとしての「丹波」
20代半ばから公募展に挑戦し始めた圭一さん。当初は「丹波焼とは違うもの」を追い求めた時期があったという。丹波の土をあえて避け、白い土を使い、鮮やかな釉薬をまとう造形的な作品。それは「伝統」と葛藤する圭一さんの試行錯誤の末の表現でもあった。
しかし、30代、40代と時を重ねるにつれて心境に変化が訪れる。
「自分のルーツがどこにあるのかを考えたとき、やはり行き着くのは丹波でした。ここは、懐深く受けとめてくれるような度量がある。『これは丹波焼だ』と自身が認めるなら、それは丹波の表現になると思います」
現在の作品は、幾何学的な構造を持ちながらも、丹波の土や火がもたらす自然な窯変(ようへん)を大切にしている。土がどんな形になりたいと求めているのか。土と対話を重ねながら形作るスタイルが、圭一さんの現在地だ。

朝の日記とコーヒー。静かなルーティンが生む「誠実な造形」
圭一さんは、1日1日を規則正しく過ごすように心がける。 朝6時前に起き、7時頃には工房の扉を開ける。前日の日記をつけ、朝ドラを観ながらコーヒーを淹れる。そこから創作の時間だ。
「若い頃は夜中まで無茶をしました。今は7時に来て19時に帰るのが調子が良い。規則正しいリズムを保つと、作るものも健やかになるんですよ」
工房の窓の向こうには、四季折々に色を変える山の景色。圭一さんはその風景を「世界中どこを探してもない、ここだけのもの」と愛おしむ。
「何百年、何千年以上も残ってきたものには、抗えない力があります。神社仏閣や縄文土器が今に伝わっているのは、誰かが大切に残したいと思うほどの価値があったから。僕のうつわも、そんな風に誰かの心にひっそりと残るものであってほしい。僕の作品を見て、かっこいいとか、なんでもいいんですけど、人の心に響くようなものが作れたらいいなと、いつも思っています」
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of
かねと窯
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〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭篠尾口2-4
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