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市野伝市窯
profile
市野達也(いちのたつや)

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市野達也(いちのたつや)
二代目
生まれ年:1962年
作陶開始年:1984年
主な受賞歴
植木鉢を専門に手掛けており「伝市鉢」は全国シェアを誇る

The state of the workshop
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Works


撮影:青谷 建
Interview
植木鉢専門の窯元の信念「山の代わりをする鉢を作れ」。植物の生命を育む鉢を打ち出す陶工、市野伝市窯・市野達也の思い
脇役に徹する。植物が息をし、健やかに育つための鉢づくり
丹波の土を使い、ろくろで一つひとつ形づくられている植木鉢は、大小さまざまで、どれも素朴な佇まいを見せる。愛好家から信頼され親しまれているこの鉢は「伝市鉢(でんいちばち)」の名で愛され、縁に厚みがあり、持ちやすさと存在感を兼ね備えている。
伝市窯2代目である市野達也さん(以下、達也さん)が40年以上、一貫して追求してきたのは、植物の生育を第一に考えた機能性だ。
「父の口癖は『山の代わりをする鉢を作れ』でした。標高1000〜2000メートルの環境で育つ植物にとって、都心部のマンションや住宅は過酷な生息場所。植物を生かすための鉢であること。それは絶対に忘れたらあかんと言われてきました」

丹波の土に粗い長石を混ぜ合わせることで、土のなかに微細な空間がいくつも生まれる。この隙間が空気の通り道となり、水はけを良くし、根が腐るのを防ぐ。基本は、表面に釉薬をかけない素焼き。鉢が持つ調湿作用で、鉢のなかの湿度を適正に保つ。
「丹波の土はカチカチに焼き締まらないから、多少息をしてくれる。それが丹波の土の良さやと僕は思っています」
植物が鉢の中で生きて成長する。そのために、形状、厚みすべてが計算されている。達也さんは「見た目がかっこいい鉢はたくさんあるけど、植物が育つための機能が備わっていないものもある」と静かに語る。
「伝市鉢に植え替えたら、4年も花が咲かなかったものが、咲いた、生き返った。そういった言葉をよくいただくんです。鉢のなかで根っこがきれいに回らないと植物は死んでしまう。だから僕たちは植物の成長をサポートできるような土の配合や形状を意識して、作っています」

体育教師への夢を諦め、父の背中を見て学んだ職人の道
子どもの頃から、達也さんにとってやきものは日常のひとコマ。屋外には成形されたものがずらりと並べられ天日干しされていた。その周りを走り回って遊び、動かして叱られてしまうような、やんちゃな少年時代を過ごした。
体を動かすのが好きで、中高と陸上に打ち込んだ。体育大学の願書を取り寄せ、準備を進めていた。小学6年生の卒業文集には「跡を継ぐ」と書いたが、本音は体育の先生だった。「当時は嫌で仕方なかった」が、自身の宿命だと言い聞かせて、京都の美術大学の陶芸科に進路を変更する。
卒業後、22歳で家業に入る。その頃は高価なやきものがよく売れた時代だった。達也さんは最初の15年ほどは、飲食店からの依頼で、父が植木鉢を作る傍らで食器づくりを続けていた。しかし、時代の変化とともに手頃な食器が普及し、達也さんは植木鉢作りに舵を切ることにした。しかし、想像以上に難しかったという。
「手の動かし方が全然違う。食器は口があたるフチを均等に薄くするんやけど、植木鉢は逆で厚くするね。そもそも植物が生きる環境そのものを考えなあかんから。用途がまったく違うものを作るのは、とても難しかった」
横に並んで仕事をした父は、言葉が少ない職人気質。褒めてもらえたのは2〜3回だけで、手ほどきを受けた記憶はほとんどない。ろくろも、窯の詰め方も、焼き方も、すべて見て覚えたという。
「父が長年研究した、土の配合、厚み、形状を守っていく。大きなプレッシャーがありました」
達也さんは「伝市鉢」のブランドに父の信念と自負を持ちながら、日々ろくろに向かっている。

丹波の山と空気を愛し、変わらぬ風景の中で生きる
達也さんのリフレッシュは、年に一度、他業種の仲間とのゴルフ旅行だ。場所は、沖縄、長崎、四国。立杭を出て、美味しいものを食べ、いつもと違う景色を見る。陶芸から完全に離れた場所で、気の置けない仲間と過ごす時間が、創作の英気を養う。
もう引退したが、子どものサッカーチームのコーチも24年務めたという。毎週土日、大きな声を出して走り回る。静かな工房とは真逆の時間が、バランスを保つ役割を果たしていた。

アクティブで穏やかな達也さんは、生まれ育った立杭をこよなく愛している。
工房に座り顔を上げると窓の外に広がる山の表情。それを眺めるひとときが達也さんにとってホッとする時間だ。
春は山桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は枝だけ。朝の日差しが山肌を照らす景色。光や色の移ろいのなかにいると、心が落ち着くという。
「立杭を訪れる方には、やきものはもちろんですが、里の空気感を感じていただきたい。大阪、神戸、姫路からたった一時間で、こんなに山が近くて、田んぼがあって、のどかな場所がある。最高やないですか」
柔らかな志を胸に、達也さんは、立杭を、丹波焼を、未来につなげていく。
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市野伝市窯
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〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭488
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