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茶陶まるか窯 

profile

市野年彦(いちのとしひこ)

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市野年彦(いちのとしひこ)

四代目
生まれ年:1956年
作陶開始年:1978年

学歴・修行歴
近畿大学 
鳥取県鳥取市 牛ノ戸焼 

主な受賞歴
兵庫県技能顕功賞

The state of the workshop

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Works

撮影:青谷 建

Interview

日常の食卓に、遊び心と温かな土の呼吸を。茶陶まるか窯・市野年彦が大切にする「用の美」のまなざし 

40年以上愛される「ネコシリーズ」と、使い勝手のいいうつわ 

茶陶まるか窯を訪ねると、猫の暖簾がかかってあり、棚にはどこか心浮き立つような愛らしい意匠のうつわが並ぶ。 

手掛けるのは4代目の市野年彦(以下、年彦さん)さんで、土味を生かした実用性あるものが基本だ。手に取ると、そのなめらかな肌触りに驚かされる。特にカップ類は、唇に触れる瞬間の柔らかさや、手に馴染む重みが緻密に計算されているという。 

年彦さんの作風を語る上で欠かせないのが、まるか窯の代名詞とも言える「ネコシリーズ」である。うつわの縁にちょこんと座る猫のシルエットや、表面にあしらわれた愛らしいモチーフ。それは単なる装飾ではなく、日々の暮らしに穏やかなアクセントを添える、年彦さんなりの遊び心だ。 

「この猫のデザインは、もう40年以上続けているんです。鳥取での修業から戻った頃、主宰していた陶芸教室の生徒さんが猫をモチーフにした作品を作っていてね。それを見て『これは面白い、ええデザインやな』と。生徒さんに『ええよ、使って』と許可をもらって、自分の作品に取り入れるようになったのが始まりです。最近は犬も作ってほしいと言われて、試行錯誤してますわ」 

自身のこだわりだけでなく、外部との交流から得たアイデアを柔軟に取り入れる。その開かれた姿勢こそが、まるか窯のうつわが世代を超えて愛される理由なのだろう。 

やきものを作ること以上に大変だった、土を作ること 

「やきものの原風景といえば、土作り。今は土工場へ行けば簡単に分けてもらえるけど、昔は自分の家で『水簸(すいひ)』して、粘土を作っとったんです」 

年彦さんの記憶に色濃く残るのは、幼い頃に見た土作りの光景だ。水簸とは、掘ってきた原土に水を入れてかき混ぜ、石や葉っぱを取り除き、泥水を流して精製していく工程のことを言う。相当な時間を費やすので大人たちの作業は過酷そのものだった。 

「冬場なんか特にしんどい。ドロドロの泥を石膏の入れ物に盛っておくと、寒さで凍てるんですわ。凍ることで水分が外へ出て、粘土になっていく。気が遠くなるような手間がかかっていてね。子ども心にうつわを作る以上に土を作るのは大変なことやなぁと感じていましたね」 

長男として生まれた年彦さんだが、若い頃は家を継ぐことを義務とは感じていなかったという。親からも「継げ」と強制されることはなかったので、大学時代は大阪で下宿し、居酒屋やガードマンなど、さまざまなアルバイトに精を出した。 

「いろんな仕事を経験して改めて振り返ったとき、『ものができていく面白さってええなあ』と気づいたんです。外の世界を知って、家業の良さがわかったんでしょうね」

22歳で、鳥取県の「牛ノ戸焼(うしのどやき)」の門を叩き、本格的にやきものの道へと足を踏み出した。

藁を焼き、土を踏む。やきものの基本を修業で教わった 

鳥取での修業は、2年半という期間ながら、年彦さんの作陶の骨格を形作る時間になった。 

「機械類が何もないところでね。土練機もないから、精製した土を足で2時間も3時間も踏んで練り上げる。釉薬も原料から作る。印象深いのは、白を出すための藁灰(わらばい)作り。藁を燃やして、燃えている最中に水をかけてカーボン状にする。それを石臼で突いて細かくしていく。冬場の寒い時期の重労働でしたが、材料を一から調達して作る工程を学べたのは、ほんまにええ勉強になりましたわ」 

修業を終えて立杭に戻った年彦さんは、丹波の土が持つ特性に改めて向き合うことになる。 

「鳥取とは土の成分が違う。鉄分を多く含む丹波の土味を生かすにはどうすればええか。それを考えながら薪窯で焼成を重ねてきました」 

丹波の自然すべてが、うつわの隠し味

年彦さんのうつわ作りの根底にあるのは、「日常生活に密着」と「手に取りやすい」という使い手への誠実な視点だ。

「いくら使い勝手が良くても、高価すぎたら使いにくい。毎日気軽に使ってもらって、『このうつわで食べたら美味しかった』と感じてもらえるのがうれしいですわ」 

なにより年彦さん自身が大切にしているのが「食」だ。かつては新鮮な魚を求めて日本海や瀬戸内海へ釣りに出かけ、自ら魚をさばくこともあった。また、自身で育てるお米の美味しさにも誇りを持っている。 

「2年前までは機械も自分で回して、米作りをしていました。今は植え付けと収穫こそ依頼していますが、日々の水の管理や草刈りは僕の仕事。この辺りの自然で育ったお米はほんまに美味しい。霜が降りて甘くなった地元の野菜と、炊きたてのお米。それを自分の作ったうつわで食べる。贅沢です」 

さらに続ける。 

「峠を越えてここへ降りると、『別世界に入ったみたい』と言われることがあります 。ここは手付かずの自然が残っている。この空気と食を体験しに来てほしいですね。自然の良さを知ってもらえたら、やきものの温かみもより深く伝わると思うんです」 

年彦さんのうつわが放つ穏やかな空気は、丹波立杭の豊かな風土と、年彦さん自身の誠実な暮らしそのものから生まれているのだ。 

Overview
of

茶陶まるか窯 

Address

〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭7-3

陶芸教室

窯元指定(15色)より、焼き上がりの色合いを選べます。
(例:内側を白、外側を緑)
体験可能日:火曜日以外
受付時間:10時~15時
予約:必要
当日受付:不可

<粘土細工>60分/1名様 3,000円(粘土1㎏、焼成費含む)
・受入人数(最大):20名
・仕上り日数:約40日
※釉薬はご希望に添えます
※初心者の方も可能です

<電動ロクロ>50分/1名様粘土2㎏ 3,000円(焼成代は別途)
・受入人数(最大):2名
・仕上り日数:約40日
※釉薬はご希望に添えます
※ご希望により最初に実演します

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