tanman-gama / ja


目次

丹満窯

profile

森本靖之(もりもとやすゆき)

profile

森本靖之(もりもとやすゆき)

二代目
生まれ年:1970年
作陶開始年:1989年

学歴・修行歴
高校卒業後、丹満窯 森本満雄に師事 

The state of the workshop

スクロールできます

prev
next

Works

撮影:青谷 建

Interview

丹波伝統の左回転とともに35年。技術は独学、実直に使いやすさを形にする陶工、丹満窯・森本靖之の静かな自負 

食卓に溶け込む、淡いグレーの静寂と使い勝手へのこだわり

淡いグレーをはじめとする目に優しい色味、市松模様や水玉といった素朴なデザイン。丹満(たんまん)窯の作品は、どれも主張しすぎることなく、日々の暮らしにそっと寄り添うような佇まいを見せる。 

当主の森本靖之さん(以下、靖之さん)は、その作品の雰囲気そのままの穏やかな語り口が印象的だ。 

靖之さんが制作において何よりも重視するのは、使い勝手である。料理を引き立てる落ち着いたカラーバリエーションについて尋ねると、「自分が好きな色だから」と照れくさそうに笑う。 

「自分が良いと思っても、お客さんに喜んでもらえなかったら意味がないんです。お茶碗であれば少しでも軽く。使いやすさを肌でつかむために、自分でも実際に使っています。だから、どうしても自分の好みと使い勝手の追求が、そのまま形に出ちゃいますね」 

日々の励みになるのは、顧客から寄せられる「お気に入りです」という声。自分が信じて作ったものが、使い手の手に渡り、喜んでもらえたと実感する瞬間が、次への活力になっている。 

父の背中を追い、ひたすら手を動かして身体に染み込ませた技術 

子どもの頃は工作や絵を描くことが好きで、空き箱を組み合わせるなどいつもなにかを作って過ごしていた。工房では父と母が働くかたわらで粘土遊びをし、窯に入れてもらっては「粘土って焼くと硬くなって小さくもなるんだ!」という発見もあり、面白かったと振り返る。 

長男として生まれたが、両親から「家業を継げ」と言われたことは一度もなかった。自身も明確な決意があったわけではないが、「いずれは自分も継ぐんやろうな」と自然に考えていたという。 

高校卒業後、陶芸学校へは進まずに家業の門を叩いた。師は、仕事をする父の背中だ。 

「特にろくろは、感覚に頼るところが大きい。父の動きを見ているだけではわからないんです。自分で回して感覚をつかむしかない。何回も、何時間も練習して、身体に染み込ませていきました。当時はとにかく必死でしたね」 

丹波焼には、全国的にも珍しい左回転のろくろが伝統として息づいている。外の学校や修業先では右回転が主流だが、靖之さんは丹波の左回転しか知らない。それは、丹波の地に根を張り、父の技を真っ直ぐに受け継いできた証でもある。 

「若い頃は、なぜか『誰かに教わりたい』という気持ちがなかったんです。とりあえず、ひたすら作らなあかんと」 

インターネットも普及していない時代、専門書を読みあさっては試し、幾度も失敗を重ねる。繰り返し取り組むことでしか、自分だけの技術は身につかないとわかっていたからこそ、日々ろくろに向き合った。わからないことがあれば、気心の知れた同業者に相談し、一つひとつ課題をクリアしていった。「気がつけば、あっという間に35年経っていました」と靖之さんは笑って振り返る。 

時代の変化に合わせ、父が主に作っていた植木鉢や花器から、現在は食器中心へと舵を切った。形や厚みが変われば、求められる技術も異なる。そのたびに使い勝手を研究し、釉薬も自ら配合。地元の土を使った釉薬を試すなど、「なるべく地のもので、自分の手で作る」という本質を大切にしてきた。

「同じものを同じサイズで作っても、作り手の感覚は必ず表れます。手作りですからね」 

立杭に根ざし、うつわに生きる 

父が他界した現在、靖之さんは一人で制作から焼成までを担っている。 

「本当は花器などは登り窯で焼きたい気持ちもあるのですが、一人ではなかなか手が出せなくて」と、少し寂しそうにこぼす場面もあった。しかし、その言葉の裏には、今できる仕事に対して決して手を抜かないという、誠実な責任感が伝わってくる。

丹波焼の里、立杭で生まれ、やきものが当たり前にある環境で育った。豊かな自然のなかで、父の背中を見つめ、ただひたすらに土と向き合ってきた35年。 

「やきものには作り手の感覚が出る」という靖之さんの言葉通り、届けられるうつわをじっと眺めていると、雄弁な言葉はなくとも、その実直な生き方そのものが伝わってくるような気がした。 

Overview
of

丹満窯

Address

〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭491

Website

目次