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昇陽窯

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大上裕樹(おおがみゆうき)

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大上裕樹(おおがみゆうき)

三代目
生まれ年:1986年
作陶開始年:2012年

学歴・修行歴
金沢美術工芸大学部 卒業
鈴木五郎氏に師事

主な受賞歴
2014年 国際陶磁器展 入選
2016年 世界工芸ビエンナーレ 入選
2017年 国際陶磁器展 入選
2021年 伝統工芸展近畿支部 新人奨励賞

The state of the workshop

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Works

撮影:青谷 建

Interview

伝統とモダンが交差するうつわ。100年後の丹波焼を見据える昇陽窯・大上裕樹の挑戦

暮らしに溶け込む「碧(みどり)」と、リズムを刻む「鎬象嵌(しのぎぞうがん)」

伝統技法を基盤としながらも、現代の食卓に鮮やかな彩りを添えるうつわを届ける窯元 昇陽窯(しょうようがま)。3代目の大上裕樹(おおがみゆうき)さんが生み出すうつわは、素朴で温かみのある丹波焼の土味を活かしつつ、どこか都会的で洗練されたフォルムをまとっている。

マットな質感のなかに微細なきらめきを湛えた「碧(みどり)」シリーズ。試行錯誤の末にたどり着いたオリジナルカラーで、和の趣を保ちながらもモダンな佇まいを見せ、現代の生活に自然に馴染み、存在感と実用性を両立させている。

また、裕樹さんが確立した技法「鎬象嵌(しのぎぞうがん)」。うつわの表面に溝を彫る「鎬」に、異なる色の土を埋め込む装飾だ。リズミカルな線が視覚的なアクセントとなり、指先に伝わる柔らかな凹凸が、手仕事の温もりを教えてくれる。

「いちばん大切にしているのは、お客様の声を直接聞くこと。丹波には問屋を通さず、作り手が直接お客さまと接する文化があります。変化の速い現代のライフスタイルに対し、お客さんの声をキャッチして作品に反映させる。このスピード感が、今の丹波焼の強みだと思っています」

制作のインスピレーションは、かつては図書館で建築デザインや海外のアート作品集を紐解くことから得ていたという 。しかし現在は、より自身の内面や日々の暮らしへと意識が向いている。

「土は、作り手の心を映し出す鏡のようなもの。自分の心が尖っていれば、作品も自ずと、トゲトゲしいものになってしまう。だからこそ、なにげないひとときを質の良いものにするように心がけていますね。誰とどんな上質な時間を過ごすか、どんな景色を見て、どんな空気を吸うか。特に雨上がりの山から霧が立ち上がり、山が呼吸しているような風景を見るとハッとさせられます」

「遠回りして広い視野を持て」――丹波と距離を置いた時間が育てた創作のベース

家のそばには登り窯があり、つねに煙が立ちのぼるような環境のなかで育った。登り窯で焼く前日は早めに床につく祖父や父を起こさないように静かに過ごした。また、丹波伝統の海老絵第一人者である祖父が、工房で黙々と絵つけをする背中が記憶に刻まれている。

長男として家業を継ぐことを漠然と意識してはいたものの、「サッカーの強い学校に行きたい」と隣町の中高一貫校へ進学する。そこでやきものではない世界に住む友人の境遇に衝撃を受けた。毎日遅くまで働く両親の姿を見て、「他に割のいい仕事があるのでは」と、一時はサッカーや学業に没頭し、家業から目を逸らしたこともあった。「当時は表面上のことしか見えてなかったですね」

しかし、裕樹さんは美術大学の国内最高峰とされる、金沢美術工芸大学を志す。

「やるからには、レベルの高い環境に身を置きたいと考えました。私立の美大は、学費が非常に高額です。夜遅くまで働く両親への感謝を込めて、少しでも恩返しになるよう、国立を目指して受験勉強に励みました」

大学卒業後、父から「すぐに帰ってくるな。もっともっと遠回りして、広い視野を持ってから戻れ」とアドバイスを受ける。裕樹さんはその言葉の通り、愛知県の作家のもとで3年間の修業後、バックパッカーとして世界一周の旅に出た。

インドの更紗や各地の青銅器など、ローカルに根付く伝統文化を肌で感じた経験は、裕樹さんの独創的な表現を支える血肉となり、地域を俯瞰して見る視座の高さにつながっている。

「100年後の丹波焼」を次世代へつなぐために

再び丹波立杭に戻った裕樹さんは、山小屋に工房を構え、軒先に棚を一つ置くところから自身の歩みを再開させた。

現在の活動の根底にあるのは「100年後の丹波焼のために」というまっすぐな信念だ。850年以上続いてきた産地を、ただ維持するだけではなく、より魅力的な場所として次世代へ引き継いでいこうとしている。

「産地の親の多くは、子どもに苦労をさせたくないと跡を継がせない道を選びがちです。でも、もしこの仕事が心から魅力的で、豊かに暮らせるものであれば、子どもたちは喜んで継ぎたいと思ってくれるはず。僕はそれを体現したい。この仕事の楽しさを、自分の背中を通じて息子たちに伝えていきたい」

最後に、丹波立杭の楽しみ方を尋ねた。

「丹波の窯元は、住居と工房、お店が一体となっている場所がほとんどです。ぜひ、作り手と直接言葉を交わしてみてください。うつわという『物』を持ち帰るだけでなく、そこに流れる空気や、作り手の想いという『心の部分』を感じてもらえたらうれしいです」

伝統に敬意を表しながら、その連綿と流れる歴史の文脈に、新しいやきものの景色を創造する。その挑戦の軌跡は、子どもたちの希望につながっていくはずだ。

Overview
of

昇陽窯

Address

〒669-2141 兵庫県丹波篠山市今田町下立杭8

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