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HIROO_STUDIO
profile
上中普雄(うえなかひろお)

profile
上中普雄(うえなかひろお)
初代
生まれ年 :1960年
作陶開始年: 2010年
学歴・修行歴
武蔵野美術大学・大学院
造形学部芸術デザイン学科 卒業
シニックデザイン修了

The state of the workshop
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Works


撮影:青谷 建
Interview
華やかな非日常からおだやかな日常へ。テレビ美術の感性が息づく、HIROO_STUDIO・上中普雄のうつわを見る目
生まれ育った立杭を18歳で離れ、42年ぶりに戻り、亡き父が築いた此右衛門(このえもん)の工房を「HIROO_STUDIO」として新たな息吹を吹き込んだ陶工、上中普雄さん(以下、普雄さん)。普雄さんの人生は、華やかな舞台美術と、静かな土の造形という、対極にある二つのデザインで彩られている。

北欧デザインを彷彿させるモダンな作風は、デンマーク訪問の記憶が源泉
普雄さんの作品は、マットな青や白が目を引く、北欧デザインを彷彿させるモダンな作風が特徴だ。デンマークを訪れた際に目にしたインテリアが色濃く影響しているという。先代の焼き締めや赤土部といった伝統的な丹波焼とはまた違った、日常の風景に少しの安らぎや刺激をプラスする、ふと手にとって使いやすいうつわを目指している。
「主張しすぎない程度にクールなアイテムに。私のうつわが誰かの暮らしのなかで、そっと彩りを添えられたらうれしいですね。購入してくださった方が、どんなふうに使うのも飾るのもすべて自由。いまの目下の目標は、より紫がかったブルーが出せるようになることです」
普雄さんは実は、42年もの間テレビ美術の世界の第一線で活躍してきた。現在普雄さんは、平日は工房で作品と向き合い、週末は家族の住む大阪吹田と立杭を往復する二拠点生活を送る。テレビ美術からやきものへ。2つの「ものづくり」にははっきりとした違いがあると、普雄さんは静かに語る。
「テレビの美術は、作ったものが一瞬で消えていく”刹那的な”喜びです。一方、陶芸は自分の手で作ったものが残り、少数の人に喜んでもらえる喜びです。お客様から『こんなふうに使っています』と写真を見せてもらったり、会話をしたり瞬間に、ものづくりの奥深さを感じますね」

土で作り焼いて組み立てた、鉄人28号の手作りプラモデル
幼少期の普雄さんの遊び場は、父の作業場だった。
「子どもの頃は、父の工房で遊ぶのが日常でした。小学校に入る前には、粘土で鉄人28号のプラモデルのパーツを一つひとつ作って組み立てたり、中学生くらいまではろくろでお茶碗くらいは作ったりしていました」
高校になると土から離れるようになり、普雄さんを魅了したのはテレビのなかの華やかな世界だった。特に当時放送されていた音楽番組『ザ・ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』の、楽曲の世界観を作り込んだ“異次元の”舞台美術に釘づけになったという。家業を継ぐという意識はまったくなかった。
高校卒業後、武蔵野美術大学の芸能デザイン学科に進学。TBSのアルバイト枠に採用され、デザイン画を参考に実物の40分の1のセット模型を作る仕事をしながら、第一線の舞台づくりの裏側に直にふれた。大学院を修了後は毎日放送(MBS)に入社。
「テレビの美術は、デザインをして、作って、本番一瞬で消えてしまう世界。でもその一瞬を何百万人という人に見てもらえるところに喜びを感じたのです。誰もが見たことのないものを作りたい一心で、数えきれないほどのセットをデザインしました」
街歩きや建築めぐり、百貨店のディスプレイなど、あらゆるデザインをインプットして知識の引き出しを満たしていった。

やきものに回帰するきっかけは妻のひとこと
多忙な日々を送る、テレビ局の仕事。しかし、定年を10年後に控えた50歳の頃、妻のひとことをきっかけに第2の人生を考えることになる。
「『60歳からの人生、今のうちに準備しておいたら?』と妻に提案されました。職場近くをぷらぷらと歩いていると、陶芸教室の看板が目に入ってどこか懐かしくなったんです」
60歳までの10年間、仕事のかたわら週に一度陶芸教室に通った。土とふれて、手びねりやろくろで思い思いに作品を作るようになると陶芸の面白さを再発見するようになったという。定年を迎えた2020年、42年ぶりに生まれ故郷である下立杭に戻り、父の工房で本格的に作陶を再開した。

作陶以外の楽しみは、ゴルフとロードスターでのドライブだという。
「普段はゴルフに行っているか、ロードスターでドライブに行っているかですね。立杭に帰ってきて、マニュアルのロードスターに乗って山を走る。それが私にとってのリフレッシュです」
そんな普雄さんに、立杭を訪れる人におすすめしたい体験を尋ねる。「42年間離れていたので、逆に教えてもらえるとうれしいです」と照れたように笑う。
華やかな舞台から、土の工房へ。普雄さんのうつわには、かつて一瞬のデザインに懸けた情熱と丹波の土が持つ静かな力が、共存しているようだ。普雄さんは今日も気負うことなく、自由な感性を形にするために表現に磨きをかけている。
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