目次
豪人窯
profile
野村豪人(のむらごうじん)

profile
野村豪人(のむらごうじん)
2002年創業 初代
生まれ年 :1972年
学歴・修行歴
北山窯 小川哲男 氏 師事
佐賀県立有田窯業大学校 卒業
末晴窯 西端正 氏 師事

The state of the workshop
スクロールできます










Works


撮影:青谷 建
Interview
カッコよさと育ちやすさを両立させる。丹波の土で作る植物鉢を追求する豪人窯・野村豪人
波の土で、植物に似合う「居場所」をつくる
豪人窯のギャラリーに入ると、窓辺にズラリと並んだユーモラスな姿の塊根植物(コーデックス)が目に飛び込んでくる。丹波の山中でありながら、都心の一角にあるグリーンショップに迷い込んだかのような錯覚を覚える。
鉢に目を移すと、緩やかなラインとシャープなフォルムが同居し、光沢を抑えた金属のような質感をたたえている。主張しすぎず、それでいて植物の力強さを引き立たせるその鉢は「goujin pot」と名付けられた。丹波焼らしい土の表情を残しつつ、現代的な輪郭をまとっている。
この鉢を手掛けるのが、豪人窯の野村豪人さん(以下、豪人さん)。今、彼が最も情熱を注いでいる仕事だ。

「植物にとって気持ちのいい”家”を作りたいんです。購入された方から『しっかり育つ』と言ってもらえるとうれしいですね」
塊根植物の多くは、アフリカや中南米などの乾燥地帯に自生する。本来とは異なる環境で生きる植物だからこそ、土台となる鉢は少しでも居心地の良いものにしたい――。豪人さんの配慮が、作陶の随所に光る。
根が真下に伸びるもの、横に広がるもの。水を欲しがるもの、乾燥を好むもの。植物の性質に合わせ、土の配合や焼き方を細かく変えていく。もみ殻を混ぜ込み、焼成後に生まれる空洞によって通気性を高める工夫も、その探求の結果だ。
しかし、最初から鉢を作っていたわけではない。以前は食器を中心に制作していたが、転機はコロナ禍に訪れた。
豪人さんが作る「黒いうつわ」に惹かれた植物好きの青年から、「植木鉢を作ってほしい」と依頼を受けたのだ。試しに制作しSNSに掲載したところ、想像以上の反響があった。
現在は、東京・代々木の塊根植物専門店「BOTANIZE(ボタナイズ)」と専属契約を結び、ファッションブランドとのコラボレーションも展開したことがある。
「愛好家の方々は、植物を育てるだけでなく、お気に入りの鉢と合わせた姿を写真に収めるのも楽しみの一つなんです。だからこそ、フォルムの美しさには徹底してこだわります」
納得のいく鉢を作るため、自らも植物を育て始めた。今では工房にあふれんばかりの植物が並び、豪人さん自身もまた植物の姿に魅了されている。

成人式の日に決めた、遠回りしない生き方
豪人さんは兵庫県芦屋市出身。サッカーに明け暮れた少年時代を経て、大学も推薦で教育学部へ進んだ。しかし、教師として働く自分の姿がどうしてもイメージできなかったという。
「性格が頑固やし、デスクワークも向いてへん。成人式の日に『手に職をつけよう』と腹をくくりました」
決めたら即行動。ほどなく大学を中退し、部活の仲間にも「陶芸家になる」と宣言して自らを追い込んだ。
陶芸をすすめたのは母だった。「指が太いから、農家とか陶芸とか土を触る仕事が合うんちゃう?」というアドバイスを受けた。「母がやきもの好きで、幼少期から母のうつわコレクションをたくさん目にしてきたんです。だから違和感なく飛び込めました」。

まず修業の門を叩いたのは、佐賀県にある北山(ほくざん)窯。2年間、土練りと薪割り、掃除をして過ごした。何百と作ったうつわのほとんどを「割れ」と命じられ、ひたすら壊し続けたという。
「師匠は、焼き上がりが少しでも気に入らなければ躊躇なく割っていました。形に残さない。その厳しさが今ならわかります」
豪人さんもまた、その精神を受け継いでいる。思い描いた完成図に届かなければ、迷わず土に返している。
修業を終えると、陶芸の基礎を改めて学ぶため有田窯業大学校に入学する。その後、丹波焼の名工・西端正氏のもとで5年間修業を積んだ。作ることに加え、陶器市で直接手渡しすることで、うつわが暮らしに入っていく実感を得た。
2002年、30歳で独立。都心に近い利便性と、小川が流れる自然環境。理想の地を求めて1年かけて探し歩き、現在の場所に「自分の城」を築き上げた。

山の工房で、ちょうどいい距離感でものを作る
「丹波の土を使い、丹波で焼く。それが僕にとっての丹波焼です」 佐賀、有田、丹波。各地で吸収した技術を融合させながら、自然の造形や建築の構造からインスピレーションを得て、うつわや鉢を形にしていく。
工房の一角では、多くの植物たちが呼吸している。寒さに弱い塊根植物のために、夏は扇風機を回し、冬は電気ストーブで温める。
「お世話が大変なんですよ。ほんま、人間みたいです」 そう語る表情は、職人の顔から一人の愛好家の顔へと緩む。
毎日の楽しみは、愛犬との散歩だ。工房の窓の外には、雑木の里山が広がる。秋になると紅葉が山を染め、やわらかな光が差し込む。その景色を見るとホッとするという。
豪人さんは今日も、丹波の土に向き合いながら、植物が気持ちよく過ごせる“居場所”を静かに形にしている。
Overview
of
豪人窯
Address
〒669-2141 兵庫県丹波篠山市今田町下立杭3-15
TEL
FAX


