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大熊窯
profile
大上巧(おおがみたくみ)

profile
大上巧(おおがみたくみ)
創業200年以上
生まれ年:1951年
作陶開始年:1974年
学歴・修行歴
追手門学院大学 卒業
京都 宮永東山 二代目・三代目に師事
主な受賞歴
兵庫県技能顕功賞
兵庫県文化賞
叙勲 瑞宝単光賞

The state of the workshop
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Works


撮影:青谷 建
Interview
土と炎、里の空気までを手渡したい。丹波の風土を五感で伝えるために、大熊窯・大上巧が続けてきた営み
主軸にするのは「日常生活に溶け込む使いやすさ」を起点にした作陶
メイン通りとなる県道沿いを走らせていると、川に向かって伸びる長い登り窯が見える。大熊窯だ。
「半農半陶の頃からの家系で、もう何代かわからない」ほど代々続く窯元を継ぐのは、大上巧(おおがみたくみ)さん(以下、巧さん)。彼が作るうつわは、土の質感がしっかりと感じられる、古丹波のような落ち着いた佇まいをしている。表面には釉薬の濃淡が生み出す豊かな表情があり、丁寧な手仕事の痕跡が静かに刻まれている。

巧さんのうつわ作りの哲学は、いたってシンプルだ。それは「日常生活に溶け込む使いやすさ」である。その視点は、自身の趣味である晩酌の時間からも養われている。
「お酒を飲まない人が酒のうつわを作っても、やっぱりどこか上手くいかない気がするんです。自分が美味しく飲めるからこそ、人にもその美味しさを伝えられる。例えば、焼き締めのビールカップはガラスと違って泡が細かく、消えにくい。土肌の気泡が、ビールを注いだ時に絶妙な泡立ちを作ってくれるんです。夏場ならうつわごと冷凍庫で冷やしておくと、より美味しいですよ」
こうした使い勝手へのこだわりは、日本人の枠を越えて広がる。巧さんは、海外からの訪問客が手に馴染む大きなマグカップを好んで選ぶ姿を見て、柔軟にラインナップを揃えてきた。
「日本人には大きすぎるサイズでも、外国の方は喜んで買ってくれはる。使う人によって生活スタイルはいろいろやからね。いろんな方の暮らしに合うたものを、作っていきたいね」
一方で、江戸期から伝わるイッチン描きで「海老絵」を施した徳利や盃など、伝統の意匠を取り入れたうつわも作り続けている。歴史を尊重しながらも、時代に合わせて飾りすぎない。この堅実な作風は、伝統工芸士である巧さんの真骨頂なのかもしれない。

20代で挑んだ「陶器まつり」の原点
「子どもの頃は友達と山で遊んだり、魚釣りをしたりしてたね。学校帰りに仕事場に寄って粘土を触ることはあったけど、そんなん昔すぎて記憶あらへんわ(笑)」
巧さんがやきものの面白さを体感したのは、高校時代の家業アルバイトがきっかけだった。当時、大熊窯には多くの職人が出入りしており、どんぶりなどの形を作る石膏型を用いた量産品の制作が盛んに行われていた。
「当時は今みたいな作家性の強い作品ではなく、生活用品を正確に大量に作っていく時代。手の動きや、ものが形になっていく過程に面白さを感じたんかな」
大学卒業後は京都で修業を積み、1977年に帰郷。そこからの巧さんは、単なる一陶工の枠に留まらなかった。26歳の時、仲間7人と一緒に、後に丹波を代表する催しとなる「陶器まつり」の前身イベントを企画運営したのだ。
「丹波焼が、どんな場所で、どんなふうに作られているのか、その風土を直接知ってほしかった。1回目で1万人もの人が来てはったんですよ」
産地の活性化に奔走した熱意は、現在の丹波焼の賑わいの礎になっている。

海外客から教わった炎の魅力と、五感で楽しむうつわ文化
大熊窯には、以前からアメリカの学生やブラジルのやきものマニアといった、やきものが好きな海外からの訪問客が数多く訪れている。中には半年間修業し、日本の蹴りろくろを持ち帰って自国で作陶を始めた人もいたという。
「彼らは、特に薪を使って登り窯で焼く伝統的な方法に強く惹かれてはった。私たちにとっては当たり前の火の文化や農耕民族的なものづくりが、彼らの目には新鮮で美しく映るんやろうね。うれしそうな表情を見てるとこっちもハッとしてね」
また巧さんは「うつわを楽しむことは、日本の文化そのものを味わうこと」だと続ける。再注目してほしいのが、懐石料理だという。
「懐石料理は、陶器、磁器、ガラス、漆器といった、日本のうつわ文化をすべて一度に確認できる素晴らしい食文化。料理人もうつわとの相性を考えて作っています。ただ食べるだけでなく、五感でもってうつわの質感や取り合わせを楽しんでほしいですね 」

最後に、立杭の地を訪れる人へのメッセージを求めた。
「お祭りの賑やかな時もいいですが、できれば普段の静かな時にのんびりと歩きながら窯元を巡ってみてください。風景も含めてこの里を楽しんで、自分だけの一点を見つけてもらえたらええんちゃうかな 」
巧さんが、多様な人の暮らしに思いを馳せながら作ったうつわ。これからも丹波の土と炎の記憶を、使う人の手元へと運び続けていくだろう。
Overview
of
大熊窯
Address
〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭尾中1
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