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︎丹波ヤマキ窯
profile
大上喜仁(おおがみよしひと)

profile
大上喜仁(おおがみよしひと)
六代目
生まれ年:1956年
作陶開始年:1986年
学歴・修行歴
奈良短期大学
主な受賞歴
兵庫県展

The state of the workshop
スクロールできます










Works


撮影:青谷 建
Interview
自然の造形モチーフと飽きのこない青と白。丹波ヤマキ窯・大上喜仁が追い求める暮らしに寄り添ううつわ
飽きない形と色に加えて、手頃さもたいせつに
工房に、ちょうど前日に焼き上がったという青や白を基調とした小鉢や皿、カップが整然と並ぶ。貝殻、梅、あじさいと、自然の造形をモチーフにした民芸的な意匠。丹波の土でしのぎや面取りが施されたうつわは、素朴でありながら上品な佇まいを見せている。
丹波ヤマキ窯6代目の大上喜仁(おおがみよしひと)さん(以下、喜仁さん)は、かつて30年にわたって焼き締めの壺を作陶し続けていた。時代が流れてニーズが変わり、約10年前に釉薬を使ううつわ作りへとシフトした。

「登り窯で焼き締めの壺を追求していました。でも時代が変わって壺や鍋の需要が減ってきて。世の中が求めていた、暮らしで使われる実用的なうつわ作りに切り替えていきました」
焼き締めから主に釉薬を使ううつわ作りに転換して喜仁さんが辿り着いたのは、青と白を基調とした色使いだった。そこには使い手視点があり、使いやすさと同時に手に取りやすさも探求する。
「黄色や赤は華やかだけれど、飽きてしまうんじゃないかと。実際に自分でも使ってみると、やっぱりこういう落ち着いた色に戻ってくる。お客さんも同じように感じているんじゃないかと思って」
同じ青でも、濃度によって表情は大きく変わる。グリーンがかった青、深い青。焼き上がりは予測が難しく、思うようにいかないこともある。それでも、飽きのこない色を追い求める試行錯誤を楽しんでいるという。
「青は、特に釉薬の濃度で色が変わる。ほんのちょっとのことで違う色になってしまう。でも表現したい色が出てほしいと願いながら作るのは、楽しいですね」
色だけでなく、かたちにもちょっとした遊び心を添える。細かに面取りされた皿はあじさいをイメージ。梅鉢はふちに貝殻(アワビの一枚貝)のようななだらかなラインを加えた。シンプルで使いやすいうつわ作りを目指しつつ、心がゆたかになってもらえればと願う。
「ヨーグルトやスイーツ、フルーツを入れたり。普段使いできるうつわであることをいちばん大切にしています」
軽さと持ちやすさを追求したカップは、喫茶店から「持ち手が優しい感じで使いやすい」と好評を得ている。極端に軽くする必要はないが、持った時に優しい感触があること。長く愛用してもらえるような、手になじむ器作りを心がけているという。

ろくろ一筋、職人としての矜持
喜仁さんは10代続く家系の、窯元としては6代目の陶工だ。祖父の時代にはすり鉢作りを行っていて、小さい頃から自然と、自分はやきものの道に行くのだと思っていた。
高校卒業後は奈良の美術短期大学で陶芸を2年間学び、その後徳島県鳴門市の大谷焼の窯元で2年半の修業を積んだ。帰郷後は父とともに、ひたすら壺作りに没頭する日々が始まった。
「毎日8時間座って、30年ほどずっと壺を作り続けて。手がつったり肩がこったりしてね、相当な数を作ったと思います」
この長年の経験により、ろくろの技術には確固たる自信がある。特に丸いもの、小さなサイズの器についてはスピーディーに制作できる腕を持つ。
「速く作るのはお手のものですね。できるだけお客さんにとって手頃な価格になるように。効率を考えながらも、手作り感を大切にしています」
あじさいをモチーフにした皿には、一つひとつ丁寧に面取りが施されている。手間はかかるが、見て楽しいうつわであることも大切にしたいと話す。力加減によって浅かったり深かったりすることもあるものの、なるべく均一に作ろうと心がけている。
「でも手作りならではの味わいとして、少しの違いがあることで味わい深くなる。お客さんも手仕事ならではの良さを評価してくださっています」

汗を流し、一杯の酒を楽しむ
喜仁さんは、副業として運送会社でアルバイトを続けているという。夜10時まで4時間を週に3回、荷物の仕分け作業に従事する。
「体を動かして汗をかくのがスカっとして気持ちいいんですよ。仕事終わりの酒が美味しくて、何よりの楽しみです」
アルバイトに向かう40分のドライブも気晴らしになる。ろくろの前に座り続ける日中の仕事とは対照的に、体を動かし汗を流す仕事をすることで、喜仁さんはバランスを保っている。
「立杭に来たら、陶の郷の窯元横丁や陶芸美術館をゆっくり歩いて、やきものにふれてほしいですね。たくさんの人に来てもらって、地域が活性化すればいいなと思います」
喜仁さんはこれからも、毎日飽きずに使い続けられ、暮らしに寄り添ううつわを作り続けていく。



