higashiyama-kobo / ja


目次

東山工房

profile

市野弘明(いちのひろあき) 

profile

市野弘明(いちのひろあき) 

初代
生まれ年:1980年
作陶開始年:2008年

The state of the workshop

スクロールできます

prev
next

Works

撮影:青谷 建

Interview

土が奏でる光の旋律。28歳で挫折、陶工としてリスタートした東山工房・市野弘明の継承の形とオリジナリティ 

うつわに刻まれる幾何学の光。伝統の先にある「Kiriko」の輝き

東山工房の作品を前にすると、その光に誰もが目を奪われるのではないだろうか。全面に施された幾何学的な彫り文様。一定のリズムで繰り返される三角形や星状のパターンが、表面全体を均一に覆っている。

いちばんの特徴は、丹波焼の素地に彫刻を施した、独自のスタイルだ。青を基調とした階調豊かなグラデーションは、光の当たり方によって彫りの稜線を強調し、凹凸が視覚的に鮮やかに立ち上がる。 

「うつわがキラキラしてほしい、というのが一つの大きなテーマです。最近は光を抑えたマットな質感も流行っていますが、僕は光の反射や移ろいを一体として提示したい。お客様が店に入ってきたとき、真っ先に目を向けてもらえるようなインパクトを大切にしています」 

形だけではなく、表面の構造と色の変化で見せる。その作風は顧客から「まるで切子細工のようだ」と評された。 

「切子と堂々と名付けるのをためらい、あえて横文字で『Kiriko』と名付けました。以前は『刻紋(こくもん)』という、名前をつけていたんですが、もっと柔らかくポップな印象にしたくて。お客様の言葉から生まれた名前なんです」 

教員への挫折、28歳からのリスタート 

「電動ろくろで、土に手を添えているだけで形になっていくのが、不思議やなという感じで、子どもの頃は父の仕事を見ていました」 

弘明さんが本格的にうつわ作りを始めたのは28歳の時

「もともとは教員を目指していましたが挫折してしまって。ふと学生のときに家業を手伝ったことを思い出し、この道に入りました」 

兄・正大さんが家業(延年窯)を継いでいたこともあり、当初は自分が陶工になるとは思っていなかった。しかし一人の表現者として歩み出した時、弘明さんのなかに「家族とは異なる個性を出さないと」という危機感が生まれた。 

「同じ作風のものを作っていたら、自分の作品が埋もれてしまう。だから、一作家として思い切って方向性を変えた、目を引くものを作ろうと思ったんです」 

まずは小さな花器を試作。板状の粘土を貼り合わせる「たたら作り」で角柱を作ろうとし「つるっとしていると面白くない」と、ウイスキーの角瓶から着想を得て独特のカット模様を施したという。 

V字の彫りから斜めに落とす要領で土を削り、切り口を見せる手法は、丹波でも類を見ない。それが想定以上の反響を得た。 

祖父から学んだ「土殺し」 

うつわの表面に意匠を施す作業は、時間も根気も要する工程だ。この気の遠くなるような作業を支える胆力は、修業時代に祖父から教わったことと地続きである。 

「家業に入った当初、1日中『土殺し』だけをさせられました。粘土の中心を出して密度を均一にし、揺れないようにまっすぐに整える基礎作業です。祖父は『これができないと、後の工程がすべてしんどくなる』と。量産時代の職人ですから無駄を削ぎ落とすことには非常にシビアでしたが、『一つの工程を丁寧に』という教えは今も僕の根底にあります」 

1つの作品を仕上げるのに、1〜2日。粘土が半乾きの状態で彫り始め、乾燥しきる前に彫り切らなければならないため、一度作業に入ればノンストップだ。目の疲れと戦いながら、至近距離で刃先を見つめる過酷な仕事である。 

「集中力が切れそうになると、音楽を流しています。J-POPが多いです。リフレッシュして、ひたすら彫り進めます」 

「静」の極致のような仕事に対して、弘明さんには熱狂的な「動」の趣味がある。 

「趣味は野球観戦、タイガースですね。高校の部活の相方だった親友が年間シートを持っていて、シーズン中は月に1〜2回、甲子園に足を運びます。もう三十年来の付き合いになる友人と大声を出して、エネルギーをもらってからまた仕事に戻る。それがリフレッシュ方法ですね」 

うつわを囲む豊かな時間。響き合う感性の連鎖を目指して 

食事を楽しみながら作品に触れる、そんなうつわを提案したいと考えている。

「例えば、お酒を入れた時にカラカラと氷の音が鳴る『スウィンググラス』といううつわがあります。コマのように回しながら、音を楽しんでお酒を飲んでほしいというイメージで作りました。実際に使ったお客様が『もう一つ欲しい』と再訪してくださったことがあります」 

伝統ある丹波焼の世界で、自らのアイデンティティを光と彫刻の陰影に託した弘明さん。繊細な意匠を施したうつわは、これからも食卓の上で、使う人の日常をキラキラと照らしていく。 

Overview
of

東山工房

Address

〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭449-1

FAX

Website

目次